No.4 電磁式スピードメータのマイル/Kmで異なるギア比


だいぶ以前の話になる。ある方にスミスの電磁式(マグネティク)スピードメータ(SSM5001/01 Km表示 グレーフェイス)を販売したことがあった。1968年のトライアンフTR6に取り付けるという。それから1週間後、その方からメールがあり、メータの針の速度表示が実際の速度よりもかなり低く、故障品ではないか、との疑念が寄せられた。スミス・メータのメーカーは、出荷前に一品一品テストしているので、そんなはずはないと思いながら、メータを送り返してもらった。しばらくして、そういえば同じような出来事が数年前にもあったことを思い出した。そのときも、同じ種類のSSM5001/1をBSA A65のオーナーに販売したところ、針の表示が全然低いとの電話だった。A65のパーツリストを調べたところ、後輪のスピードメータのギア・ボックスのギア比が、マイルとKmでは異なることが記載してあり、原因はこれだと考えた。つまり、A65のオーナーは、スピードメータのギア・ボックスはマイル仕様のままにし、スピードメータのみKm仕様にしたからではないか? 早速、確認の電話をすると、やはり米国仕様のA65だった。後日、Km仕様のギア・ボックスに交換したところ、針の表示は正常になったと連絡をもらった。

今回のトライアンフTR6も同じ原因と考え、メールしたところ、やはり米国仕様のTR6であり、交換する前のメータはマイル表示だった。

下表に、マイルとKmの違いを記載したので、今後の参考にしてください。

例:トライアンフ T120とTR6の場合
項目 マイル表示 Km表示
メータのスミス番号 SSM5001/06 SSM5001/01
メータの最大目盛表示 150MPH 190KPH
ギア・ボックス部品番号 D637 D373
ギア・ボックスのギア比 15/12 2/1

1マイルは1,609mなので、1Kmとの比率は、約1.6となる。上表のギア・ボックスの比率をみると、(2/1)/(15/12)=1.6となり、ぴったり一致する。

私は、こうした間違いが生じる一因は、トライアンフのパーツリストにもあるのではないかと思う。ご存じのように、パーツリストは米国仕様(マイル表示)と英国仕様(Km表示)が別々に発行されている。そして、スミス・メータの番号は、どちらのパーツリストにも米国仕様と英国仕様の両方が記載されている。しかし、ギア・ボックスについては、パーツリストの該当する仕様に相当する部品番号しか記載されていない。なかには、明らかに記載ミスと思われるパーツリスト(1966年 No.6)もある。

例:BSA A50とA65の場合
項目 マイル表示 Km表示
メータのスミス番号 SSM5001/05 SSM5001/04
メータの最大目盛表示 150MPH 190KPH
ギア・ボックス部品番号 19-9217 19-9212
ギア・ボックスのギア比 1.25 : 1 2.0 : 1

BSAの場合、スミス番号もギア・ボックス部品番号が異なるものの、基本的にはトライアンフと同じである。しかし、パーツリストのギア・ボックスには、マイル仕様とKm仕様の両方の部品番号とギア比が記載されており、トライアンフと比べて親切である。